【J1第8節】浦和レッドダイヤモンズ3-0京都パープルサンガ

人生は色どられた影の上にある〜ファウストより

浦和レッドダイヤモンズ3-0京都パープルサンガ
◇日時:2006年4月15日(土)15時05分KO
◇会場:埼玉県さいたま市埼玉スタジアム2002(4万0657人)
◇主審:吉田寿光
後半10分 【浦和】長谷部誠(右足←三都主)
後半27分 【浦和】ワシントン・ステカネロ・セルクゥエイラ(右足←三都主)
後半39分 【浦和】ワシントン・ステカネロ・セルクゥエイラ(右足←三都主)

■浦和レッドダイヤモンズ(3-4-2-1)
GK23:都築龍太
DF2:坪井慶介
DF4:マルクス・トゥーリオ・ユウジ・ムルザニ・タナカ “田中マルクス闘莉王”
DF20:堀之内聖
MF14:平川忠亮
(後半18分-FW30:岡野雅行)
MF13:鈴木啓太
MF17:長谷部誠
MF8:アレッサンドロ・ドス・サントス “三都主アレサンドロ”
(後半44分-MF16:相馬崇人)
MF6:山田暢久
MF10:ホブソン・ポンテ
FW21:ワシントン・ステカネロ・セルクゥエイラ

■京都パープルサンガ(4-2-2-2)
GK1:平井直人
DF23:大久保裕樹
DF19:登尾顕徳
DF5:鷲田雅一
DF7:児玉新
MF18:米田兼一郎
(後半39分-FW31:田原豊)
MF16:斉藤大介
MF27:加藤大志
(後半13分-MF14:中払大介)
MF8:美尾敦
FW20:林丈統
FW9:カルロス・アドリアーノ・デ・ジョス・ソアレス “アレモン”
(後半23分-FW30:松田正俊)

柱谷幸一コーチ(京都)
「きょうは守備をしっかりオーガナイズして、カウンターを仕掛けようという狙いのゲームでした。
前半は守備も悪くなかったし、カウンターも何度か決まりかけていたと思います。
問題だったのは右サイドで、三都主のところにアプローチにいったとき、後ろのスペースを山田にかなり使われていたことです。
そこでハーフタイムに、大志に少しポジションを落とし三都主にアプローチに行って、スペースを大久保に埋めろと指示しました。
にもかかわらず、後半になってもそのマークの受け渡しがうまくいかずに、3失点とも右サイドから破られてしまいました。
ただ、予算規模も大きく厚い選手層を誇っている、首位の浦和に勝つことは難しい。
敗れたからといって悲観する必要はないでしょう。
選手たちはきょうのカウンター戦術をよく理解してくれて戦ってくれたと思います。

アレモンを下げた理由?
疲れていましたし、ボールがおさまらなくなっていたと見ました。
そこで、ここ数試合調子がよかった松田を入れたんです」

ギド・ブッフヴァルト・コーチ(浦和)
「前半については何も語ることはない。
ウチも相手もまったくひどいできだった。
選手の目を覚ますため、ハーフタイムでことしはじめて大きな声を出すことになったよ。
おかげで、後半は全員のパフォーマンスが上がり、ボールも動くようになった。
まぁ、長いシーズンだからこんな試合もあるだろう。
きょうは対戦相手が弱すぎたせいで、最終的には3−0という圧勝になった。
ただ、次の相手はきょうのようにはいかないだろう。
いかにきょう犯したミスを修正するかがポイントだ」

鷲田雅一選手(京都)
「後半はサイドをうまく使われてしまった。
自分たちも得点を取りに行かなければならなかったので、3失点はしょうがない部分もあるとは思います」

登尾顕徳選手(京都)
「ワシントンは体が大きくのにボール扱いがうまい。
密着しすぎると入れ替わってしまうので、完全にマークしきれませんでした。
守備重視の戦術でも、攻めないとどうしようもないので、攻撃とのバランスを取っていくのが今後の課題だと思います」

曜日に、とある先輩と会った。
前に働いてたことのある場所でお世話になった人だ。
1年ぶりぐらいの再会だった。
「うひゃひゃひゃひゃ。で、さいきんどうなのよ?」
「どうって? 毎日現場に行って、体動かして、それだけですよ」
「だぁ! それだけって! おまえ! なにが楽しいの? 生きてて」
「んー…週末にサッカー見に行くことっすかねぇ」
「あぁ。あれだっけ? 京都だっけ? そうそう、実はさ、おれも去年からJリーグ好きになったのよ」
日本代表戦をテレビで見るくらいの人だったはずだ。
「もうね、レッズファン、うひゃひゃひゃひゃ」
「へぇ…」
「ウィーアー・レッズ! 浦和カモンカモンカモン!だよ、うひゃひゃひゃひゃ」
先輩はいつのまにかカジュアル・レッズサポになっていた。

★ ★ ★

目の前には、見渡すかぎり赤い色があった。
埼玉スタジアムでは、レッズサポーターが熱心に声をあげていた。
浦和対京都の一戦。
前半は、攻める赤い選手たちにたいして、紫の選手たちが適切なポジショニングで守っていた。
ワシントンを、鷲田と登尾が2人がかりでマーク。
ポンテと山田には、ひさしぶりにダブルボランチを組んだ斉藤と米田が対応する。
サイドの平川には美尾と児玉が、三都主には加藤と大久保が。
ワシントンへのマークを外してしまったとき、闘莉王が上がってきたとき、それ以外は危ない場面は少なかった。

とはいえ、客席にいたおれは試合にちっとも入り込めないでいた。
京都がただ守りに専念しているだけにしか見えなかったからだ。
アレモン、林が裏へ走ったときは敵陣深くまでボールを運べるけれど、それだけだった。
フォローの選手も少なく、点数が入る気配がみじんもない。
心躍らせる瞬間がまったくない。
目の前の光景に現実味が感じられない。
レッズへの大きな声援は、コンビニで流れる有線放送のようにただ雑音として耳に入ってくる。
いままでだいぶサッカーを見てきたけれど、これほど時間が経つのがゆっくりだったことはあっただろうか?
いつのまにか頭のなかは、昨日のことを思い返していた。

★ ★ ★

目の前には、コーヒーの濃い茶色があった。
狭い喫茶店では、先輩は熱心に話を続けていた。
「うひゃひゃひゃひゃ。このまえもさぁ、埼玉スタジアム行っちゃったよ」
「あ、あした京都対浦和戦で、おれも埼スタ行きます」
「うはー、仕事で行けないんだよなぁ。え、京都って強いの?」
「…いま、調子、悪いです」
「何位くらい?」
「下から数えて4つめ、かな…」
「うひゃひゃひゃひゃ。やばいじゃん、やばいじゃん。浦和、首位よ。勝てないっしょ」
「順当にいけば、勝てないでしょうね」
かなり控えめに、そう言った。
「だろうなぁ。つか、虐殺じゃね? 5点くらい取られたりとかさー」
「いや、もう7点取られたこと、あります(苦笑)」
「うひゃひゃひゃひゃ。7点て! 7点て! じゃあ、明日負けるの見に行くようなもんじゃね? じゃね? わかんねぇよなぁ、おまえMだっけ?」
言うことがなくてすっかり冷めてしまったコーヒーを口に運んだ。

★ ★ ★

ハーフタイムのあいだずっと並んで買ったコーヒーを口に運んだ。
もう、後半が始まっていた。
浦和の攻撃が激しさを増す。
後半10分、ゴール前、ニアに走り込んだ長谷部に先制を許す。
後半27分、中払がファウルをしたあとのプレイを素早く再開されて、ワシントンが追加点。
京都の選手は度重なるボディブローにフラフラになったボクサーのようだった。
フォワード以外の選手が引いて、大量失点は避けたいと思っているように見えた。
中盤でなんとかボールを奪っても、そこでひとあんしん。
ワンテンポ置いて、前を見て、さぁ誰にパスを出そうか、と周りを見る。
前半にはまだ見られていた、カウンターへの第一歩という守備のしかたではなくなってしまった。
そんな光景には、少しがっかりした。

★ ★ ★

先輩のことばには、少しがっかりした。
なので、ちょっとだけムキになってしまった。
「たしかに、負けを見に行くようなもんかもしれません。
でも、負けてもいいんですよ。
あ、誤解しないでください。
そりゃあ勝ってほしいっす。
けど、サンガの選手が大舞台で試合やってるのを見れて、ある程度は満足というか…。
なんでか?って、うーん。
生まれ故郷にサンガっていうチームができて。
そのサンガを見てるうちに、心底好きになってきて…。
もちろんサンガの選手も大好きで…。
だから、純粋に好きなチームが戦ってるのを見たい、生で応援したいって気持ちがまずあるんですよ」

★ ★ ★

浦和の攻撃はまだ続いた。
後半39分、ボックス内でボールを受けたワシントンへの寄せが遅れ、みごとなループシュートを決められる。
松田、田原が相次いで投入されるも、同じタイプの選手だけに相乗効果はなかった。
2人をめがけてのアーリークロスも少なかった。
そもそも、ボールホルダーへフォローする動きがない。
テレビでは写ってなかったが、児玉だけがマイボールになったとき前に全力疾走していた。
ほかの選手は、途中投入された選手でさえも足が止まっていた。
10人のフィールドプレーヤー。
そののなかでいちばん一生懸命走っているのが、レンタル移籍中の選手なのはどうしてだろう?
複雑な気持ちだった。

★ ★ ★

おれの説明はまだ続いた。
「それと…。
おれって、あんまりいままで真剣になんかをやったってこと、ないんですよね。
正直、いまの仕事も人間関係とか考えなくていいんでやってるだけで。
でも、サッカーの選手ってそうじゃないじゃないですか。
プロでやれるだけの力と、好きなことをやれる喜びをもって、サッカーに打ち込んでる。
誇り高く生きてる。
がんばってる。
見ててあぁいいな、って。
だから、できるだけ生で見て刺激を受けたい、っていうか」
支離滅裂。
自分は、いったいなに言ってるんだろう?
複雑な気持ちだった。

★ ★ ★

終わった。
完敗、完全な力負けだった。
京都の「時間」は一度たりとも訪れなかった。
今シーズン、はじめてだ。
「おっ」と声が出たのは、松田が胸トラップから反転しようとしたジラルディーノっぽいプレイ。
それと、守備で大久保がイーブンのボールをマルセイユルーレットのような体の使い方でマイボールにしたプレイ。
90分をつうじて、その2つだけだった。
スタジアムを出て、駅へ向かう途中に頭に浮かんだこと。
どうせ負けるなら、ベタ引きじゃなく、ちゃんと戦わせてやりたかったなー。
選手はやってて楽しいのかなー。

★ ★ ★

終わった。
なんだか一方的に話してしまった。
先輩とは、そのあと彼のいまやってる仕事の話。
それと、昔話。
90分くらいことばをかわして、わかれたのだった。
喫茶店を出て、駅へ向かう途中に頭に浮かんだこと。
本当の自分なんて、そんなかんたんにわかってもらえないのになー。
なのに、なんでしゃべっちゃうんだろうなー。

★ ★ ★

そう思って、悲しくなった。
目頭にちょっとだけ涙が浮かんだ。

★ ★ ★

そう思って、悲しくなった。
目頭にちょっとだけ涙が浮かんだ。

★ ★ ★

だけど。

★ ★ ★

だけど。

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「まぁいいか」と声にして、そして笑った。

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4件のコメント

  1. 先日書き込みさせていただいたものです。私は、今日久しぶりの生観戦です。某県から彼女と飛行機で駆けつけます!なんとしても勝ちたいですね!

  2. 今回のエントリーは特に大変楽しく読ましていただきました。
    僕自身のしょうもないブログでええ加減になんちゃってな客観的文章を書くんが嫌になってきてたんで。
    やっぱ僕達も試合をしにいってるんですもんね。
    いつか、僕もこんな文を書いてみたいと思います。
    そんときはパクリとか思わずに見守ってやってください。
    まぁ、僕にはこんな文才はないんですけどね。

  3. すみません、試合前にリンクさせていただいたのに、試合後はリンク消えちゃいまして、申し訳ないです。
    あと、うちのサイトってgooにトラバすると「sex」になっちゃうんで、二重に申し訳ないです。
    紫有人さん/nlnsさんは、プレビューとアフターフォローと両方綿密にやられているんで、すごくためになります!
    なおこの文章は剽窃がいっぱいで、文才なんてないのでした(苦笑)。

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