スポニチにこんな記事が上がっていた。
オフシーズンにヨーロッパへ視察に行ったとき、ヴァンサン・コンパニ(元ベルギー代表)が率いるバーンリーのサッカーが大いに参考になったという。
■京都・曺貴裁監督 今季モデルクラブとしているのは…「彼らの攻撃にヒントを得た」
https://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2023/01/13/kiji/20230113s00002179308000c.html
……今季のチームモデルとしてイングランド・チャンピオンシップ(2部相当)の首位バーンリーを取り入れていることを明かした。昨年オフに約2週間のオランダやドイツを含めて欧州視察。その中で観戦したバーンリーのサッカーに魅了されたという。「得点をどう取るのかという面で彼らの攻撃にヒントを得た。突出した選手はいないけど、全員が何かしらで(得点に)関わっている。たまたま個でいったとかではなく。すごく良いチームだった」……
ヴァンサン・コンパニに関しては昨年末にOpta Analystにこんな記事が上がっていて、気になっていた。
「コンパニはすでにランパードや、スティーブン・ジェラードよりもマネージャーとしてはるかに高いポテンシャルを間違いなく示している」というのだ。
■ヴァンサン・コンパニは、ペップ・グアルディオラの後任として最終的にマンチェスター・シティに就任する可能性があるのか?
https://theanalyst.com/eu/2022/12/vincent-kompany-burnley-manchester-city-manager/
1試合あたりの平均ポゼッションは、マン・シティの66.6%に対し、彼のバーンリー・サイドは63.6%、パス成功数はシティの610.1に対し466.3である。また、1試合あたりのパス成功数はシティが610.1本であるのに対し、バーンリーは466.3本と、いずれもイングランドリーグの2部リーグでトップ4に入っている。
今季就任したバーンリーでの戦いぶりから「グアルディオラの後任候補」と称されるコンパニ。
いったい、どんなサッカーを見せているのだろうか?
RSCアンデルレヒト(ベルギー)での3年間
コンパニが監督としてのキャリアをスタートさせたのは、2019-20シーズン。
選手として長くプレイしたマンチェスター・シティを退団し、古巣・アンデルレヒトで「選手兼任監督」に挑む。
就任時には、マンC時代に監督だったジョゼップ・グアルディオラの影響を受けていると公言。
ポゼッションスタイルのサッカーを目指す、としていた。
しかし、指揮するチームは開幕から深刻な成績不振に陥ってしまう。
もともと監督としてのライセンス(UEFAプロライセンス)を持っていなかった背景もあって、「試合日は選手に専念する」こととなった。
2020-21シーズンからは監督専業になるも、2シーズンとも3位に終わり、3年契約が終了。
そんな経緯から、「マンC流のポゼッションサッカーを目指すも、結果が出せなかった」という印象を個人的に持っていた。
しかし、特に最終シーズン(2021-22シーズン)は専門家筋も注目するサッカーを展開していたらしい。
いくつかのweb記事とYouTubeの動画をもとにまとめてみる。
攻撃面の特徴〜ビルドアップ
フォーメーションは、最初の2シーズンはほぼ4-2-3-1で、最終シーズンは4-2-2-2のフォーメーションに。
ボールを持ってビルドアップする局面では、
- 2人のセンターバックの右横に選手が1枚下がって3バックを形成
- 3バックと前線との間は「距離」をおく
のが特徴的だ。
まず3バック化に関して。
最終サインからボールを繋ぐときアンカーがCBの間に落ちて3バックとなる形はよく見かけるが、〝コンパニ流〟は4-2-2-2のボランチの1枚、あるいは右サイドバックが右のCBに入る。
バリエーションがあることで、相手にとってはプレスに行くターゲットが定めづらくなるのは間違いない。
3バックに、アンカー1人、攻撃的MF2人、フォワード2人に左右のウイングバックの「3-1-4-2」で、センターバックがボールをもったときは、アンカー以外は高い位置を取る。
一見、最終ラインと前線が間伸びしたポジショニングに見えるけれど、左右センターバックがボールを持って持ち上がるためのスペースを空けておくのだ。
そして最終ラインでパスを回して、相手フォワードのプレスを誘い、前線へのパスかセンターバックのオーバーラップで相手に守備〝第1ライン〟を突破しようと試みる。
攻撃面の特徴〜ゴールへの展開
最終ラインから首尾よくボールが前に運べたら、いかにゴールに向かうか。
そのために、いかに流動的に選手が動いてスペースをつくるか、いかに相手の最終ラインの裏に走りこむ選手を作り出すか、がポイントになる。
フォワードを高い位置に2枚置いているのは、相手ディフェンダーを引きつけることができるだろう。
フォワードがサイドに流れれば空いたハーフスペースを味方(攻撃的MFやウイングバック)が攻め上がり、フォワードがDFを背負いながらボールを受けにいけば味方が駆け上がる。
また、裏への走り込みはバーチカル(縦方向)だけでなく、斜めから相手の裏を突くことも多い。
守備面の特徴
守備は奪われたらすぐ取り返すためハイブレスは大前提。
しかし、そこでボールが奪えなければ、4-4-2にセットして守備陣形を整え直す。
2トップはパスコースを切ることを優先し、やみくもなプレッシングはかけない。
プレス開始は、相手が中盤までボールを運んでからとなる。
その段階で4バックは高い位置を取り、前線から最終ラインまではかなりコンパクトになっている。
中央にはほぼスペースがなくなるため、相手はサイドに展開することが多くなり、そのタイミングで素早くプッシュアップして、ボールを奪うことをめざす。
以上がアンデルレヒト時代にコンパニが展開していたサッカーの特色。
では、今季バーンリーでどんなサッカーをやっているのかは、またいずれまとめてみたい。
※参照
■ピッチの上の芸術 – ヴァンサン・コンパニの独特な4-4-2戦術
https://cafetactiques.com/2022/04/12/art-on-a-football-pitch-vincent-kompany-unique-4-4-2-tactics/
■ヴァンサン・コンパニがアンデルレヒトで用いた、3バックでのビルドアップの形、パターン、そしてバリエーション
https://cafetactiques.com/2021/08/21/vincent-kompany-back-3-buildup-with-anderlecht-analysis/
■グアルディオラの弟子筋にあたるヴァンサン・コンパニが、東ランカシャーでダイレクトなプレースタイルの見直しを図る
https://totalfootballanalysis.com/head-coach-analysis/202223-vincent-kompany-at-burnley-tactical-analysis-tactics
■ヴァンサン・コンパニとアンデルレヒト – 戦術分析
https://medium.com/top-level-sports/vincent-kompany-anderlecht-a-tactical-analysis-6a628369d18