2001年9月11日――アメリカ同時多発テロ事件当日。
ハイジャックされた4機の旅客機のうちのひとつ「ユナイテッド航空93便」では、何が起こったのか?
UA93便については、も~いろんな話が語られていて、「UA93」で検索するだけでおなかいっぱい!になるくらい。
乗客たちがハイジャック犯に立ち向ったため、テロ目的地には到達せず、ワシントン近くのペンシルバニア州ピッツバーグで墜落したのだという。
しかし、先に3機のハイジャック機が自爆テロを行っていたため、UA93便もハイジャックされたことを把握した米空軍が撃墜した、といううわさも根強かったりする。
***
ネタバレにならないように、この映画のストーリーというよりは、一般にUA93便で起きたとされる内容を振り返ってみよう。
まず、wikipedeiaを参考に時系列にしてみると、
8時42分 ニューアーク空港出発(滑走路混雑で40分遅れ)
9時27分頃 ハイジャックされ、コックピット乗っ取られる
9時50分頃 乗客が反乱
10時00分頃 乗客ハイジャック犯を制圧、コックピットに
10時03分 墜落
という感じである。
UA93便の乗客たちは、自分たちが乗っている飛行機がアラブ系らしき男たちによってハイジャックされるようすを目の当たりにする。
犯人たちは爆弾をもっている。
ナイフで乗組員たちを脅す。
「静かにしろ」という。
恐怖のなかで乗客は考える。
これはハイジャックだ。
じっさい爆弾が爆発してしまえば、犯人たちも木っ端微塵になってしまう。
さすがに、そこまではしまい。
飛行機がどこかの空港の着陸すれば、解放される可能性もある。
おとなしくしていれば、助かる可能性もある。
しかし。
犯人の目を盗み、電話(旅客機内のカード電話)をした乗客によって、ハイジャックされたほかの旅客機があることを知る。
それらは、なんと世界貿易センタービルに、ペンタゴンに、突っ込んでいったというのだ。
アメリカという国家へのテロ行為。
このUA93便のハイジャック犯も、同じ考えなのではないか。
つまり、生き残る可能性はゼロだ。
それならば。
ただ死を待つよりは、抵抗をしよう。
そう、乗客たちは決意する。
***
映画では、上記のようなUA93便の乗客・乗組員たちの心情を、犯人グループ側の心理、地上での管制官、米軍の混乱を交えながら、再現していく。
同時進行で各所で事件が起こるのは、まるで「24」のよう。
そして、管制官や空港の職員の多くはじっさいの人物が演じている(エンドロールには「as himself」と出てくる)。
こうしたことで生み出される緊迫感は、すばらしかった。
そして、いちばんの映画のヤマは乗客たちが犯人に抵抗するに至る部分だろう。
ただ、おれはそれよりも感動したシーンがあった。
犯人の狙いが「自爆テロ」だとわかり、死を覚悟した乗客たちがつぎつぎと地上に電話をかける。
相手は、家族だ。
人生がまもなく終わろうというなかで、みながつぎつぎと受話器に向かって言うことば、それは。
「I love you.」
やっぱ、これだったよ。
「さいごに。
きみを愛している、それだけを伝えたくて。
それじゃあ、さようなら」
泣きながら電話を切る乗客たち。
さすがアメリカ人、と思いながら、やっぱりウルっときてしまったのだった。
そういう意味で、自爆テロにまつわるドキュメンタリーでありながら、「人間が死に直面したときに何を考えるのか?」について考えさせてくれる、いい映画だと思う。